「カビ抵抗性試験」という試験方法があります。方法名だけ見ると何だか難しそうですが、やっていることはシンプルです。
カビの生えやすさを調べたいサンプルに対し、カビの胞子をつけた後に、カビの増殖に適した温度・湿度の環境下に置きます(培養)。その後、肉眼や顕微鏡でサンプルを観察することで、どの程度カビが生えやすいかを調べる方法です。

「カビ抵抗性試験」は、カビには適用できますが、酵母や細菌には適用できません。酵母とカビは、分類学上は真菌の仲間です。しかし、酵母の増殖の仕方は、カビよりも細菌に似ているのが、その理由です。
酵母とカビ|分類学上の関係
酵母は、生物の分類学上では、真菌という大きなグループに属しています。このグループには、カビやキノコも含まれます。つまり、酵母はカビやキノコとは親戚関係にあり、分類学的にはカビに近い存在です。
しかし、同じ真菌でも、酵母は単細胞で、球形や楕円形をしていますが、カビは細長い糸状の細胞(菌糸)が連なってコロニーを作ります。この形態の違いが、両者を視覚的に区別する大きな点です。
酵母・細菌・カビ|増殖の仕方
多くの酵母の増殖は、母細胞の一部が膨らんで新しい細胞(娘細胞)となり、やがて母細胞から分離して独立することによって進みます。これを出芽といいます。出芽は、二分裂で増殖する細菌の増殖方法と非常に似ています。
細菌も酵母も一つの細胞が二つに分かれ、急速に個体数を増やすことができます。
一方、カビは、「胞子が落ちて、菌糸が伸びて、胞子形成細胞を作って、胞子を拡散させる」といった、多様な発育形態をとります。
酵母・細菌・カビ|菌の見え方
細菌と酵母は対象物の表面で増えたとしても、内部に入り込むようなことはありません。また、表面を広がっていくようなことはほとんどしません。
一方、カビは対象物の表面だけでなく、内部へと立体的に広がっていきます。肉眼や顕微鏡で、ふわふわした綿のような見た目などとして、比較的はっきりと確認できます。
カビ抵抗性試験での菌量の測り方
カビ抵抗性試験(JIS Z 2911など)は、おもに「表面をどれだけカビが覆ったか」をスコア化して評価します。カビの場合、菌糸が広がっていくため、「面積の◯%を占有した」などといった評価がしやすく、カビ抵抗性試験が理にかなっています。
一方、酵母の場合はどんなに増殖しても、表面を這いつくばりながら広がっていくことはありません。そのため、「見た目の面積」で増殖の程度を評価することがありません。
ロドトルラと「赤カビ」
ロドトルラ(Rhodotorula)は、水回りに発生するピンクぬめりを構成する代表的な酵母です。しかし、「赤カビ」と呼ばれることもあり、カビであると誤解されている方も多くいるようです。酵母であるため、カビ抵抗性試験のように観察での評価は原則行いません。
まとめ
酵母とカビはどちらも真菌に分類されますが、その増殖の仕方、増殖後の広がり方、見た目は大きく異なります。酵母とカビ、それぞれの特性を理解し、菌量の評価方法を考える必要があるのです。

