概要
検体(培養物)からDNAを抽出し、16S rRNA遺伝子領域(細菌)またはITS領域(真菌)の塩基配列の一部を決定し、微生物の種を特定(=同定)するための情報を得る試験です。
※ 製品等からの微生物の分離は行っておりません。製品の変色・変質部などから微生物を分離し、同定されたい場合はこちらの試験となります。
試験方法
検体(培養物)から菌体を回収し、DNAを抽出します。
分離(純粋培養)が不十分な検体の場合、配列データが得られない可能性がございます。
ご指定の解析領域(16S rRNA遺伝子領域またはITS領域)をPCRにより増幅します。
16S rRNA遺伝子領域の場合、原則として10Fと800R(【使用するプライマー】参照、16S rRNA遺伝子領域の約0.8 kb)を用いて増幅します。ほぼ全領域(10Fと1500Rを使用)を解析されたい場合は、その旨ご教示ください。
PCRで増幅した産物を用い、シーケンス反応を行います。
シーケンス反応の産物をキャピラリー電気泳動で分離して検出することで、配列のデータを取得します。
【使用するプライマー】
対象 | 名称 | 配列(5’→3’) |
細菌 | 10F | GTTTGATCCTGGCTCA |
800R | TACCAGGGTATCTAATCC | |
800F | GGATTAGATACCCTGGTA | |
1500R | TACCTTGTTACGACTT | |
真菌 | ITS1F | GTAACAAGGTTTCCGT |
ITS1R | CGTTCTTCATCGATG |
対象 | 名称 | 配列(5’→3’) |
---|---|---|
細菌 | 10F | GTTTGATCCTGGCTCA |
800R | TACCAGGGTATCTAATCC | |
800F | GGATTAGATACCCTGGTA | |
1500R | TACCTTGTTACGACTT | |
真菌 | ITS1F | GTAACAAGGTTTCCGT |
ITS1R | CGTTCTTCATCGATG |
※ 第十八改正日本薬局方 参考情報 遺伝子解析による微生物の迅速同定法に記載の細菌または真菌用のプライマーです。
【使用試薬・機器】
●試薬
・PCR(16S rRNA遺伝子領域):Bacterial 16S rDNA PCR Kit(タカラバイオ)
・PCR(ITS領域):Fungal rDNA (ITS1)PCR Kit Fast(タカラバイオ)
・PCR産物精製:ExoSAP-ITTM Express PCR Product Cleanup Reagent(Thermo Fisher Scientific)
・シーケンス反応:BigDyeTM Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(Thermo Fisher Scientific)
・シーケンス産物精製:BigDyeTM XTerminatorTM Purification Kit(Thermo Fisher Scientific)
●機器
SeqStudio Genetic Analyzer(Thermo Fisher Scientific)
ご提供いただく検体について
純粋培養した微生物(細菌・酵母:寒天平板培地または液体培地、カビ:寒天平板培地)のみ
試験が可能です。
解析されたい領域をご指定下さい。
【送付時の注意点】
・常温で問題ございません。
・複数コロニーを解析対象とする場合は、解析対象のコロニーが分かるよう、マジック等により目印をお願いします。
納品物
・ご報告書(試験方法を記載)
・シーケンスデータ(ForwardとReverseそれぞれの波形データ)
※ 納品物はオンライン上でご提供します。また、見積書・請求書等、その他関連書類もオンライン上でPDFでのでのご提供となります。
※ 波形データの解析は行いません。
※ 検体は、事前に返却の申し出がない限り、試験終了後すぐに滅菌処分いたします。
試験期間
検体が弊社に到着した後、約5営業日(営業は平日のみです)。
費用
1検体あたり14,000円(税抜)
※16S rRNA遺伝子領域のほぼ全領域(10Fと1500Rを使用)を解析する場合、
1検体あたり17,000円(税抜)となります。
※再解析する場合(解析する領域を変更したり、検体を弊社で純培養したりして再度試験する場合)には、
追加で1検体あたり12,000円(税抜)がかかります。
ご依頼にあたっての注意点
・検体が純粋培養されていなかったり、試薬やプライマーが適合しなかったりして解析が不可能であった場合でも、費用がかかります。
・解析した配列を用いて、必ず種や属が特定できるという確約はできかねます。解析した配列で、種や属が特定不可能な場合でも費用がかかります。
・試験前に、解析する領域を決定するため、提供された検体の顕微鏡観察や純粋培養を行う場合、こちらの試験となります。