浴室にカビが生える本当の理由|換気だけでは不十分なワケ

多くの人が、「家庭の中でカビがもっとも生えやすい場所は浴室」と答えるでしょう。その主な理由は、お風呂に入ったときに、湯気でモワッとした空気を感じる経験があるからかもしれません。実際に、浴室ではカビが発生していることを見ることが多いです。

たしかに、お風呂の使用中は、浴室の湿度が急激に上がり、ほとんど100%になります。しかし、その状態は、あくまで一時的なものですよね。換気扇を回せば、約30分から1時間で、湿度は60%未満にまで下がります。これは、リビングや寝室といった、他の部屋とほとんど変わらない数値です。

では、なぜ換気扇を回しているのに、カビが生えてしまうのでしょうか?それは、カビが発生する原因が、空気中の湿度だけではないからです。

カビの発育に必要な3つの条件

前提として、カビが発育するためには、3つの条件がすべてそろう必要があります。

栄養源(エサ)
カビは、たんぱく質汚れ、石けんカス、皮脂、髪の毛など、浴室にあるあらゆるものを栄養源とします。

温度
20〜30℃がもっとも発育しやすいといわれています。

水分
カビは、まわりに存在する水を発育に使います。目に見えて濡れている状況ではなくても、空気中に存在する水分(水蒸気)も利用します。大気中に含まれる水蒸気の量を表すのが湿度です。

カビ発生のカギは「水」

浴室には、カビの栄養源となるタンパク汚れ、皮脂汚れ、髪の毛、石けんカスなどが常に存在します。また、人間が生活している空間にあるため、温度も、カビが発育しやすい20〜30℃になっていることが多いです。
温度がその範囲より、多少下がったり、上がったりしても、発育の速度が落ちるだけであり、発育自体は可能です。

しかし、カビが発育するうえで欠かせない「水」という条件は、この2つの条件(栄養、温度)に比べて、常にそろっているわけではありません

カビは、浴室の中でも、水が溜まりやすい場所に多く発生します。たとえば、浴槽と壁の間を埋めるシリコーン部分、ドアのパッキン、窓サッシの周辺、浴槽の蓋、天井などです。

換気扇を回して浴室の湿度が急速に下がったとしても、これらの箇所は局所的に濡れたままで、すぐには乾きません。
濡れているということは、カビの発育に十分な水分が存在しているということです。
つまり、換気扇を回して湿度(水蒸気の量)が十分に下がったとしても、カビは水たまりや、水滴が残る場所から水分を得て発育します。水が溜まる箇所で、カビは水を使うことができます

ここに、カビ対策の落とし穴があったのです。

湿度が高くても、カビは「水そのもの」を積極的に使う

浴室によく見られるクロカビ(クラドスポリウム)の胞子を水に均一に混ぜた液体を、プラスチック板に噴霧し、高湿度の容器の中で培養して、顕微鏡で観察する実験をしてみました。

その結果、比較的大きな水滴の中で菌糸が伸びているのが確認されました。

クロカビ(クラドスポリウム)。プラスチック板の表面全体にカビの発育が確認できたが、大きな水滴の中では発育がより良好だった。

この結果は、たとえ湿度の高い状況であっても、「水そのもの」が存在する箇所で、カビはより発育しやすいことを示しています。

「湿度」の落とし穴|空気中の湿度と表面の湿度

多くのカビがある程度良好に発育するには、80%~90%以上の湿度が必要とされています。カビによっては、60〜70%程度でも発育が可能なものも存在しますが、発育は非常に遅く、目に見えるまでには時間がかかります。

「低湿度でも発育できるカビがいるのでは?」と考える方もいるかもしれません。確かに、このようなカビはいますし、60〜70%程度でも発育はできますが、そんなカビでも湿度が80%~90%以上で水分が豊富な場所をより好みます。低湿度で生えるカビが、乾燥に強いというわけではありません。

カビを効果的に防ぐための対策

では、どうすればカビを効果的に防げるのでしょうか?

一番の対策は、カビの栄養源となる汚れをしっかり落とすことと、浴室に溜まった水滴を取り除くことです。

①汚れを落とす
入浴後には、浴室全体を水で洗い流し、皮脂や石けんカスなどをきれいに洗い流しましょう。これにより、カビの栄養源を断つことができます。

②水滴を拭き取る
最も効果的な対策は、浴室の壁や床、浴槽の蓋、ドアのパッキンなどに残った結露や水滴を拭き取ることです。スクイージーやタオルを使って、溜まった水をなくしてしまいましょう。これにより、カビが発育する環境を根本から断つことができます。

「換気扇を回しているのにカビが生える」と悩んでいる方は、ぜひ「拭き取り」も試してみてください。カビが生えない快適な浴室を保つことができます。

カビ対策の基本は、部屋全体の湿度を適切に保つことですが、それだけでは不十分です。上記の対策を組み合わせることで、日々の暮らしの中でカビの発生をぐっと抑え、より快適な環境を保つことができます。