ど根性大根の大ちゃん
アスファルトのすき間から生えた大根が「ど根性大根の大ちゃん」として話題になったことがありました。
本来畑で栽培される大根が思いがけない所に現われたこと、その強い生命力に人々は心ひかれたようです。
ど根性クロカビの「クロちゃん」?
実は、家の中でもこれとよく似た現象がみられます。
浴室に生えるクロカビは、もともと森や土の中にすみ、落ち葉などを栄養として暮らしていますが、
小さなカビは風や水の流れに乗ってどこへでも移動します。
たまたま浴室に入り込んでシリコン剤の表面に付着すると、人の皮脂や垢などその場にあるものを栄養に菌糸を伸ばし、やがてはシリコン剤の内部にまで侵入、定着します。
行き着いた場所で生き抜く姿はまさに「ど根性クロカビ」ですが、浴室のクロカビが「クロちゃん」と呼ばれ、愛されることはありません。
アスファルトのすき間は実は植物にとって良い環境だという指摘(※)がありますが、
クロカビにとっても利益があるから浴室に居つくのでしょう。
人が思う以上に彼らはしたたかです。
健気だからと「クロちゃん」を保護すれば、浴室はカビだらけになります。
人とカビ双方のためには、クロカビがシリコン材に定着する前に、日頃のこまめな掃除で排水溝に流すことです。
そうすれば、クロカビはカビ取り剤にさらされることなく自然に還り、私たちも快適に暮らすことができます。
※出典:「スキマの植物図鑑(中公新書)」塚谷裕一著