カビとは?
カビは、「真菌」とよばれる菌類の一群です。酵母やキノコも真菌のなかまです。
カビは、「菌糸※」がたくさん集まって、網の目のように広がり、菌糸体とよばれるかたまりになったとき、はじめてわたしたちの目に見えるようになります。
わたしたちが、パンや鏡餅、果物などの表面にカビが生えたと気づくのは、この状態のときです。肉眼で見えている時点で、カビの成長はかなり進んでいると考えていいでしょう。
成熟した菌糸は、胞子を作ります。胞子には、カビの種類によってさまざまな形や色があります。現在までに、約10万種のカビが知られています。カビは、わたしたちに有益な働きをしたり、害を及ぼしたりしています。
「カビ」は、特定の生物分類を指すわけではありません。糸のような形態をもち、「ふわふわ」「粉っぽい」「ぬめぬめ」といった外見をもつ真菌の一般的な呼び名です。
※ 糸のような細胞。先端から栄養や水分を吸収しながら、伸びていく。
カビの発育過程
カビは次のように発育します。胞子が、植物の種子みたいなものだと思っていただければ、分かりやすいかもしれません。
① 胞子が落ちる
空気中を漂っていた胞子が、物の表面(基質)に落ちる。
*顕微鏡がないと観察できない。
② 菌糸が伸びる
水分・栄養・温度・酸素の条件がすべてそろったときに、空気中または基質中に菌糸を伸ばす。
③ 胞子の形成・拡散
成熟した菌糸が胞子を形成する細胞を作り、胞子を空気中に拡散する。
*青・黒・緑などの色は主に胞子の色。

「カビの個数」ってなに?
実験などでいう「カビの個数」は、寒天培地で培養したコロニー(カビのかたまり)の数です。胞子1個から1個のコロニーができるため、「胞子の数=カビの個数」として数えられています。
ただ、実際には胞子・菌糸・菌糸体など、カビには成長段階があります。植物に種子や茎、葉、花などの状態があるのと似ています。そのため、個数だけで、カビの発育の程度は判断できません。
ある日、約10万個だったカビが、2週間後に約10万個と変わらなかったとしても、発育状態は変化している可能性があります。
カビの役割
カビは、生態系や人間にとって、さまざまな役割を果たしています。
「カビ=悪者」と考えがちですが、有益な面、不利益な面の両方を持ち合わせています。
有益な働き
① 自然界の「分解者」
枯れた植物や死んだ動物などの有機物を分解し、栄養素を自然界に循環させる。
② 食品の生産
しょうゆ、味噌、酒、かつお節、チーズなど、さまざまな食品に使われる。
③ 医薬品の製造
ペニシリン(アオカビ(Penicillium)が合成する抗生物質)などが有名。
有害な影響
① 物の腐敗・劣化
食品や建築材料などで発育し、腐敗・劣化をもたらす。
② 感染症の原因
抵抗力の落ちた人に対して、カビの種類や暴露量によっては、感染することがある。
家にはどんなカビがいるの?
アオカビ(Penicillium)、コウジカビ(Aspergillus)、クロカビ(Cladosporium)は、一般家庭で見られる代表的なカビです。
しかし、同じ家でも、それぞれの場所の湿度や素材などによって、生えるカビの種類が変わってきます。
比較的湿度の高いお風呂、キッチンなどの水周りには黒色酵母様菌(Aureobasidium)、フォーマ(Phoma)、ススカビ(Alternaria)、クロカビ(Cladosporium)などが、湿度の低い所にはユーロチウム(Eurotium)、コウジカビ(Aspergillus)、アズキイロカビ(Wallemia)などが生えやすいです。
ちなみに、お風呂によく見られるピンクぬめりは、カビではなく、酵母や細菌でできています。
カビが生えるとどうなるの?
住環境でのカビの影響は、美観を損ねたり、カビ臭くなるだけにとどまりません。
① アレルギー疾患
アトピー性皮膚炎や喘息などの原因になる可能性がある。
② 感染症
免疫機能が低下した人に対して、まれに感染を引き起こすことがある。
③ カビ毒
一部のカビはカビ毒を産生し、健康に悪影響を及ぼす可能性がある。
④ ダニのエサ
カビはダニのエサにもなり、衛生面で注意が必要。
「カビ取り剤」や「防カビ剤」製品の安全使用ガイドなどについては、日本家庭用洗浄剤工業会(家洗工)のホームページをご覧ください。
カビの発育に適した条件とそれに応じた対処法
カビの発育には、条件がすべてそろうことが必要です。
発育条件がそろうまでは、カビは休眠状態でいることが可能です。多くの場合、一般環境下では、カビの発育に適した条件と適していない条件を繰り返すため、カビはゆっくりと発育し、わたしたちの目に触れるときには、かなり成長した状態で現れます。
① 水分
多くのカビの発育には、80%以上の湿度を必要とします。
カビによっては、60~70%程度でも発育が可能なものも存在します。
ただし、湿度がこれ以下でも、部分的に水分が存在すれば、カビは発育可能なことには注意が必要です。
② 栄養
木材、紙、ほこり、食べ物など、さまざまな有機物を栄養に発育することができます。
③ 温度
ほとんどのカビは20~30℃を発育に最適な温度帯としています。
これ以上またはこれ以下の温度帯でも、ゆっくりと発育することが可能です。
④ 酸素
一部の細菌と異なり、カビの発育には必ず酸素が必要です。
対策のポイント|水分コントロールがカギ!
酸素は人間にとっても必要です。温度は、人間にとって快適な温度と被ります。よって、酸素や温度を制御するのは非現実的です。栄養は、定期的な清掃などによってある程度は除去できますが、限界があります。
カギとなるのは水分です。
結露を除去する、漏水を修理する、換気を改善する、除湿機を使用するなどのことは、有効な予防策です。
これらの予防策を行っても、カビが生えてくる場合は、防カビ剤の使用も検討しましょう。
カビは基質の表面だけでなく、内部にも菌糸を伸ばす可能性があるので、単に表面を清掃しても、完全に除去できていない場合があります。
お風呂のタイルの目地に発生するカビは、その最たる例です。