【液体サンプルの除菌試験】試験結果の解釈方法を教えてください。

液体の検体の除菌試験結果の解釈については、下記の通りです。

下記に記載する除菌効果の判断や生菌数の有意差などの解釈は、あくまで一例や一般論に過ぎず、試験結果に対してどのような解釈・考察をするべきかということに法的な決まりや制限があるわけではございません。弊社より、試験結果の解釈についての助言・アドバイスを差し上げることは可能ですが、その妥当性・適切性については、弊社ではなく貴社の責任にてご判断いただく必要がございます。
解釈・考察については上記の通りですが、製品に効果等を記載する場合は、不正確な表現・誤解を与える表現にならないようご注意ください(広告表示の場合は法的な制限もございます)。

● 除菌効果の判断について
初発菌数または対照(コントロール)の生菌数と比較し、ある時間後の生菌数が1/100~1/1000以下となったとき、除菌効果があると判断するケースが多い※1です。

【例】 初発菌数 3.6×106 CFU/mL → ある時間後の生菌数 1.4×104 CFU/mL のとき、生菌数は1/100以下※2となっており、除菌効果があると解釈する。

※1 あくまで一般論ですので、貴社にて最終的にどのように解釈されるかについて制限はございません。
※2 (1.4×104)/(3.6×106)=0.0038…≦1/100(=0.01)

● 生菌数の有意差について
微生物の生菌数について、約10倍未満の差や常用対数値で0.5未満の差については、有意差ではないと解釈するケースが多いです。(試験方法や試験条件などによって多少異なります。)

【例】
1) 初発菌数 1.5×106 CFU/mL → ある時間後の生菌数 7.8×105 CFU/mL であったが、10倍未満の差であるので、生菌数は有意に減少していないと解釈する。

2) 初発菌数 1.5×106 CFU/mL → ある時間後の生菌数 7.8×104 CFU/mL であり、10倍以上の差であった。n=3の各試料値においてもばらつきが少なかった。したがって、除菌効果の一般的な判断基準(1/100~1/1000以下の生菌数)には達しないが、生菌数は有意に減少傾向であると解釈する。

● 除菌率について
除菌率(減少した生菌数の割合)には、決まった算出方法があるわけではありませんが、初発菌数または対照(コントロール)の生菌数と比較し、下記のように算出することが適当と考えられます。

 ・除菌率(%)=[1-(ある時間後の検体の生菌数 / 初発菌数)]×100
 ・除菌率(%)=[1-(ある時間後の検体の生菌数 / ある時間後の対照の生菌数)]×100

【例】 初発菌数 1.5×106 CFU/mL → ある時間後の生菌数 7.8×103 CFU/mL であったので、この時間における除菌率は、[1-(7.8×103/1.5×106)]≒99.5(%)と算出できる。

除菌率は、報告書には標準的に記載しておりません。
記載をご希望でしたら、算出方法を具体的にご指定ください。

● 除菌効果が上がる試験条件について
除菌効果の一般的な判断基準には達しないが、生菌数が有意に減少傾向であるという結果が得られた場合、測定時間を延ばすか、検体の濃度を高くすることで、除菌効果が上がる可能性がございます。
ただし、検体の想定使用方法と試験条件に乖離がございますと、適切な試験条件設定とはいえませんのでご注意ください。

● 表の見方について
・対照(コントロール):検体の代わりにリン酸緩衝生理食塩水、生理食塩水、滅菌精製水など、試験菌に影響を与えないと考えられる適当な液体を用いて同様の試験を行った結果です。検体が存在しない場合、試験菌が減少しないということを確認するために置く試験系です。

・生菌数(CFU/mL):検体(試験試料)1 mLあたりの生菌数です。CFUは微生物の生菌数を表す単位※3です。有効数字2桁※4で表示しています。

※3 関連FAQ:CFUって何ですか?
※4 関連FAQ:試験結果の生菌数の表記が「〇.〇×10^〇」(^〇は上付き文字)となっているのですが、どういう意味ですか?

・初発菌数:試験菌液の生菌数(通常107~108 CFU/mL)と検体への接種割合をもとに算出した理論生菌数で表しています。試験菌液の生菌数は、ご報告書には記載しておりません。

【例】 検体(試験試料)10 mLに、5.8×108 CFU/mLの試験菌液を0.1 mL接種した場合、初発菌数は、5.8×108(CFU/mL)× 0.1/10 = 5.8×106(CFU/mL)となる。

・各試料値(各測定値):例えば、3つの測定値が記載されている場合、検体を10 mLずつ3本の試験管に分注し、n=3で試験(3回繰り返し試験)を行っております。その3回それぞれの生菌数測定結果です。

・平均値:各試料値の相加平均(算術平均)です。「-」(検出限界未満)の場合は、「-」を検出限界の生菌数(10 CFU/mL、1 CFU/mLなど)に置き換えて算出しています※5。例えば、各試料値が3.0×101、-、-で検出限界が10 CFU/mLのとき、平均値は1.7×101と記載します※6。ただし、すべての結果が「-」の場合は、平均値も「-」と記載します。

※5 試験前の協議等によって「-」を0 CFU/mLとして算出しているものもございます。
※6 (3.0×101+10+10)/ 3 ≒ 1.7×101

・-:生菌数の検出限界未満(<10 CFU/mL、<1 CFU/mL)を表します。通常、0.1 mLまたは1 mLの試験試料を寒天培地に接種し、生菌数を測定しますので、1 mLあたり10 CFU未満、もしくは1 CFU未満の生菌は検出できません。